星祭りの二人でバレンタインデー
「あの、ニケくん、今日、バレンタインだから、これ……良かったら」
「!サンキュ、……開けていい?」
「うん!」
 照れくさそうに、けれど嬉しそうに受け取ってくれたニケに、ククリは満面の笑みで頷く。
「星の……チョコレート?」
 可愛らしいリボンを解き、箱を開けると、その瞬間、少女の大好きなお菓子と同じ匂いがふわっと広がる。夜空色の箱の中には、キラキラ光る色紙で包まれた小さな星が、ちりばめれていた。
「うん、これならニケくんも食べられそうだなって思って」
「そっか、へへ、じゃ、早速戴こうかな、ククリも一緒に食べるだろ?」
 毎年、そうやって、甘い物が苦手な彼のために、彼女が選んでくれたお菓子を二人で分け合って食べるのだ。しかし、ククリは首を小さく横に振った。
「ううん、食べたいんだけど……そのチョコレート、あたし食べられないの」
「へ?」
「ふふ、食べてみて、そうすればわかるわ」
 そう言って、悪戯っぽく笑うククリにニケはドキリとする。
「あーうん、じゃあ、いただきます……」
 誤魔化すように箱の中に目を落とし、星を一つ、手に取った。色紙を外し、口に運ぶ。
「!これ……」
「ど、どうかな?」
「……おいしい、なるほど、確かにククリは食べない方がいいやつだ」
 チョコレートをかんだ瞬間に広がったリキュールの香りに、ニケは目を細める。
「ありがとな、いっぺんに食べるの勿体ないから、少しずつ貰うよ」
「えへへ、良かった、喜んでくれて」
 顔を赤らめて、ククリははにかんだ。そして、一拍置いて、隣の少年を見上げると、言った。
「お酒、酔った?」
「?酔わないよ、これくらいじゃ………………あっ」
 突然の可愛らしい問いかけに吹き出してから、ニケはその意図を察して口元を片手で覆った。覆った顔から覆う指先まで、みるみるうちに赤く染まっていく。
(もしかして期待されてる……!?)
「ク、ククリ、あの、この前の、祭りの時の事、なんだけど」
「!きゃーっごめんなさい!ちょっと思い出しただけなの……!」
 正直な反応に、ニケは赤い顔を伏せる。これは逃げ道を作っていた自分が悪い。ちゃんと言わなくてはいけない、と思う。
「あの時さ……オレ、酔ってた訳じゃな……いやちょっと、酔ってたかもだけど、それは、酒にじゃないというか……ああ、そうじゃなくて、正気で、……あーっ駄目だ……恥ずかしくて……」
 しかし、今度は両手で顔を覆って黙り込んでしまったニケに、ククリは嬉しそうに、幸せそうに頬を綻ばせ言った。
「お返事、楽しみにしてるね」