優しさの話
「どうせ全回復するんだ。ぎりぎりまでHP減らしとかないと勿体ないだろ」
 致命傷ではないものの、決して浅くはない腹の傷口を蹴りつけられ、ニケは溜まらず悲鳴をあげる。
「いだだだだ、ちょ、マジでやばいって!恨みでも……あるかもしんないけど!今助けてやったんだから流せよっ……ぐっ」
 だめ押しとばかりに踏みつけて、レイドは、自分を睨みつけるニケの顔を覗き込んだ。
「……ああ、助かった。礼代わりだ、警告してやる。お前、自分が上手く立ち回りさえすれば、大抵は丸く収まると思ってるだろう」
「……は?」
「他人の感情が、自分の思い通りになると思ってやがる。傲慢なんだよ、お前の優しさは」
「……うっ……恥ずかしい奴……」
「茶化すな!……二度は言わないからな」
 そう吐き捨てて、レイドは踏みつけていた足をどけると、散々痛めつけた傷に回復魔法をかける。
 ニケはぼんやりとそれを見ながら、心の中で、こっそりと呟いた。
(コイツほんと、下手だよなぁ……他人に優しくすんの)