グルグルボーイズが現代っぽい世界でルームシェアする話
『交渉(ニケとレイド)』
「お前だって、1人だったら面倒くさがってカップ麺か外食ですますだろ、使い切れずに食材を駄目にするリスクもあるしな。つまり食事も忘れて研究に没頭するオレ達と同居しているお陰でお前の健康も保たれているというわけだ」
「前半はわかるけど後半は納得いかない。メシ作るのはいいけど見返りくれ」
「ちっ……何が望みだ」
「月一で焼き肉!か、なんかうまいもの食いたい」
「……仕方ないな、いいだろう」
「よっしゃ!トマもだからな!掃除洗濯はだいたいあいつやってんだから」
「わかってる」

勇者→炊事
魔技師→掃除洗濯
王子→お財布

『待ち人(トマとニケ)』
 あれは、二人で少し遅い初詣に行ったときのことだ。彼は見事引き当てた大吉のおみくじに目を通して、ポツリと言った。
「待ち人来たる、か」
 自分の強運は信じても、占いの類は信じないのに、その顔がとても嬉しそうだったので、つい、聞いてしまった。
「誰か、会いたい人がいるんですか?」
「……あー、うん」
 彼は一瞬、しまった、という顔をして、けれど、小さく頷いて教えてくれた。
「村にいたときに、仲良かったんだけどさ、家の都合で向こうが村出て、アイツめちゃくちゃ泣きながら手紙出すって言ってたのに、来る前にこっちも村を出ることになって、受け取れなくて、それっきり」
「……なるほど、だから彼女作らないんですね!」
「あのな〜っ、たく、お前意外とそういう話好きだよな?……確かに、女の子、だけどさ、ガキの頃だから、そういうのわかんねぇよ、けど」
 彼は呆れ顔で僕を見て、それから、はーっと、白い息を吐いて、言った。
「もう一度会って、話がしたいんだ、それだけ」

『砂糖の数は(レイドとニケ)』
「……甘い」
 適当だが珈琲を淹れるのはやたらと巧い。一度褒めたら気をよくしたのか、彼は同居人の分まで淹れるようになった。いつものように受け取った鼻腔をくすぐるそれを一口飲んで、レイドは微かに眉を顰めた。
「あれ、砂糖三つじゃなかったっけ」
「二つだ」
「そっか、わり、間違えた。珈琲足す?」
 マグカップ一杯に淹れたブラックを啜りながらニケが聞くと、レイドは少し間を置いて、言った。
「いや、いい、……いったい誰と間違えたんだ?女か」
「っ?!……な、なに言ってんだよ、急に!」
「図星か」
 げほ、と少しむせて、珍しく動揺を見せた、あまり自分のことを話さない同居人にニヤリと笑ってみせると、彼は少しだけ赤くなった顔で、そんなんじゃ無い、とぶっきらぼうに言った。

(自分のやっと再会できた幼馴染みのお砂糖三つの女の子=相手のバスで一緒になる憬れの三つ編みの女の子っていうのをニケは薄々気付いててだけど確かめないでいる)