ピアスを装備したいと思った勇者と協力した魔界の王子の話
「う〜ん、なんか魔防アクセ欲しいんだけど、ピアスとか、軽くて沢山つけられるからいいよな……なあ、ピアス穴って、どうやって空けんの」
「そんなことも知らないのか、田舎者」
「うるさいな、いいだろ」
 小馬鹿にした口調で言われ、ニケは小さくレイドを睨む。
 レイドは少し考えて、ニヤリと笑った。
「こうやって空けるんだ」
「え?」
 レイドの指が、ニケの金の髪に差し入れられる。次の瞬間、パシッと耳元で小さな音がした。
「いっ……て」
 油断した。慌てて身を引こうとするが、遅い。ビリ、と走った痛みに、ニケは耳に触れようとする。
「触るな、素人が下手に触ると、神経が出てくるぞ」
「げっマジかよ」
「ああ、次はこうするんだ。大きめに空けとくか、大は小を兼ねると言うしな」
 言ってレイドは自分がつけていたピアスを外すと、ニケの耳を掴み、先程魔力を飛ばして自分が空けた穴にグリグリとわざと乱暴にねじ込む。
「いっイデデデデ、やめ、やめろ!」
「……何かつけとかないと、すぐ塞がるぞ。安定したら、返せよ」
「……うー、くっそ……なんかすげー、いやだ」
 レイドが手を離すと、ニケは心底厭そうに眉をしかめて、ジクジク痛む自分の耳にそっと触れる。硬いものが、指先に触れた。
「因みに店でやるとこれが一回2000R」
「高っ!」
 勿論嘘である。けれどニケは驚いて、それから反対側の耳を指差して言った。
「タダならこっちもやってくれ、これに大金払うの、やだ」
「、お前本当にタフだよな……飯くらい、奢れよ」
 転んでもただでは起きない。レイドは彼の真剣な目に、呆れた声で言ったのだった。

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「あら、どうしたの、それ」
 待ち合わせをしていたククリの代わりに、彼を迎えたのは、彼女の親友だった。
「あ、これ?次のダンジョン、魔法使う魔物が多いらしいんだ、だから魔防アイテム付けられた方がいいかなって、あけて貰った」
「へぇ……ちょっと見せて?」
「……?どーぞ」
 こんなありふれた物に興味を示すとは思っていなかった。そう思いながらニケはジュジュに耳を貸す。すると、彼女は思いきり、その耳を引っ張った。
「!痛い痛い痛い!なんだよ!」
「……これ、あなたの趣味じゃないでしょう。いったい誰に選んで貰ったのかしら?」
「ハ?……これ、レイドんだよ、たまたま街であって、どうやってあけるんだ?って聞いたら、こうやるんだって。一月ぐらいしたら外せって言って……いだいって!何怒ってるんだよ?」
 さらに強く引っ張ってから、ジュジュは手を離した。そして、はー、と大きな溜息をつく。
「……まったくもう、普段は抜け目ないくせに、こういう油断するんだから。今回はこれで許してあげるけど、もっと気をつけなさい。いい?でないと、いつかクーちゃんを悲しませることになるわよ」
「???うん?」
「あ、ニケくんおかえり!ごめんね、忘れ物取りに行ってたの……あ!」
「?どうした?」
「ピアス!いいなぁ!あたしも、あたしもつけたい!」
「っ駄目!」
「え、どうして?」
「やめとけ、すっげー痛いから!それに、アイツにお前さわら……、いや、痛いからやめとけ」
「あら、ニケくんがあけてあげればいいじゃない?」
「嫌だよ、傷一つ付けたくない」
「へぇ、どうする、クーちゃん」
「……や、やめておきます……ありがと……」
「はいはい、あたしもそれがいいと思うわ。その代わり、とびきりかわいいイヤリング、選んで貰いなさい。それと……ついでに、その趣味の悪いやつの次を、ちゃんとクーちゃんに選んで貰うといいわ」