投げるタグまとめ
--フォロワーさんの設定三次創作(どちらかがカヤ)--

■朗報
「聞いたか」「なんだ、また悪い知らせか」「いいや、違う」どこか嬉しそうに客人は言う。「ヴルヘイ卿のご子息が、とうとうお生まれになったそうだ」人間のような物言いに苦笑する。全く、皮肉な事だ。知性の証であるとでも言うように、魔界にもまた、人間の世界と同様に、身分制度があった。ただ、ここでは、無力な者が上に立つことは、決して、ない。「そうか、祝いの品を考えなくてはな」


--ニケクク--

■あいことば
「ルエッティシア」
 少女は、先ほど読み終えた物語の中でしか通じない言葉を、頬を染めて唱える。相手には、伝わらないからこそ言える言葉。それなのに。
「……ルエッティシア」
 金の髪の少年が、同じ言葉を唱えて、照れくさそうに顔を伏せたので、少女はびっくりして、言った。
「ど、どういう意味!?」
「どういう意味って……ククリこそ」
「えっと……えっとね、本の中の言葉で、とっても素敵だったから、言ってみたかっただけなの」
 えへへ、と、ごまかし笑いをした少女に、少年も同じようにはにかんだ。あまりに、幸せそうに、その言葉を紡ぐから。
「オレも、言いたくなっただけ」


■伝説の二人
「【救世主の働きにより大地裂けるとき鳥が現れ、信じるものを聖なる理想郷「アナスタシア」へと運ぶであろう】……本当に、伝説通りになりましたね」
 魔王ギリを倒し、アナスタシアへと昇った勇者と魔法使いが地上へと帰ってきたその夜、魔技師は日記を付けながらそう言って、当の本人達に微笑んだ。少年は、伝説の剣でギリの影を裂き、少女の「恋するハート」は世界を包み、そして彼らを、アナスタシアへと導いたのだ。
 彼の言葉に、勇者は、少し決まり悪そうに、まあ、剣は、オレ一人じゃ持てなかったんだけどな、と言って、隣の魔法使いを見た。すると、彼女はそんな彼に、にっこりと笑った。
「あたしの【恋するハート】も、一人じゃ、できなかったよ」


■等価
「あたしは、この世界がどんなに大きいか、まだ、わからないけどね、たとえ果てが無くたって、きっと、おんなじくらい、ううん、もっと、もっと、彼のこと、好きだって、思うの」
 そう言って幸せそうに、目の前の少女は笑ったと、半ばあきれ顔でジュジュは、向かいに座ったトマを見た。あの阿呆、ちゃんと受け止めきれるのかしら、と心配そうに言う彼女に、トマはお茶を入れたマグカップを渡しながら微笑んだ。大丈夫ですよ、勇者さん、こう、零したことがあるんです。ボクが教えたって言うのは、黙っていてくださいね。こっそり耳打ちされた言葉に、ジュジュは思わず赤面した。なるほど、確かに彼はこの世界を包み込んでしまうほどの恋を、受け止める者なのだ。
――この世界がどんなに広くったって、きっと、この気持ちと同じものは見つからない


■すきなもの
 最近、この町の大通りで、見慣れない金の髪の男の子を見かけるようになった。しかし彼は、どうやら甘いものが好きではないらしい。いつだって、苦手なものを目にした愛猫と同じ顔をして、足早にうちの店の前を通り過ぎていく。それなのに、ある日、彼はやってきて、小さい声で言った。「チョコレートって、ある?」ああ、ありますよと答えると、彼は少し嬉しそうな顔をして、「一番甘いのを、箱一つ」と言った。そして、私が御自宅用でよろしいですか、といつもの文句を言うと、彼は何故かパチパチと瞬きをして、それから、少し顔を赤くして、うん、と言ったのだ。
 ああ、そういえば、あれ以来、彼の姿は、見かけていない。

--スラルン--

■伝言
「おねーさんは行かないの?今なら、追いつけると思うけど」
「もう、いいのよ」
(盗賊は、身軽さが命だからな、重たいものは持たないんだ)
 それは、遠回しではあるけれど、確かな拒絶だ。それがわからないほど、自分はもう子供ではない。
 そう告げると、少し、考えて、彼の弟子、自分の弟分とも言える少年は、呆れた声で言った。オレが教わったのと、少し違う、と。
「盗賊は、本当に大事なもんは、持ち歩かないんだってさ」

--ジュ→ニケのような--

■あの子のために
「話、聞いてたわよね?一曲ごとにパートナーが変わるって。だから、ちゃんと踊れるようにしとかないと駄目よ」
「げっ、なぜわざわざそんな面倒ごとになりそうな事を」
「さあ、暇だったんじゃない?……ほら、練習するわよ、大丈夫、最後はちゃんと、元のパートナーのところに戻れるから。クーちゃんのために、頑張りなさい」
 相手が悪い、逃げられないとぽつり呟いて、彼はあたしが差し出した手を取った。
「絶対に間違えたら駄目よ、もし、足なんて踏んでごらんなさい、……天罰が下るから」
 そう、決して、近づきすぎないように、間違えないように。

--女性向け(拗らせてるニケとレイド)--

■死が二人を別つ時
 傍らで、酔い潰れているレイドに、呆れたように笑って、ニケはぽつぽつと言う。
「オレはさ、アイツの為に生きるけど、それが、ちゃんと終わって、それでもまだ、お前が、懲りずに、今と同じように、思ってんなら、……オレの終わりは、お前にやってもいい」
「……言ったな?」
「何だよ、起きてたのか、ま、そん時にゃ、もう、オレ、じーさんだろうけどな、って何だよ、ち、近いっ……っ何すんだ、バカ!」
 頬を押さえて自分を睨み付ける相手に、レイドは、今にも泣き出しそうに顔を歪めて、笑った。
「将来の約束、だろう?」


■死に場所
 お化け?と言って、猫目を丸くした幼さの残る彼に、違う、訳あって、死んだことにしてたんだ、と、同じように少年の面影を残す青年は言った。世界中から勇者と呼ばれる彼は、ふうん、とつまらなそうに、じゃあ、今日はお前のおごりな、と、宿敵である筈の魔族の青年に言った。これからお前の追悼式するとこだったんだよ。礼を言うべきなのか文句を言うべきか悩みながら、青年は勇者について行く。酒場では、彼の仲間達が待っていて、一緒にやってきた青年に驚き、そして、からかうように、けれど無事であったことを安堵するかのように、笑った。
 珍しく、速いペースで呑んで、けれどまだ呑み足りなそうな勇者を置いて、仲間達はあとはよろしく、と酒場を後にする。二人より少しだけ年下の魔技師が、一度だけ振り返って言う。主賓は最後までいないと駄目ですよ、ではお先に。青年はパタン、と閉まったドアの音と同時に、溜息をついて隣を見た。オレも行くからな、そう告げて立ち上がろうとする。しかし、それは叶わなかった。勇者が、青年の服を思いきり掴んだのだ。驚いて振り返ると、今にも泣き出しそうな瞳が、青年を映していた。そして、それは消え入りそうな声で、言った。
「お前は、置いてかないでくれよ」