🗐 rkgk

No.29

#メモ 高難易度クエスト書きたいとこだけ
「トマ!」
「う~ん」
 ニケが慌てて駆け寄ると、彼の側に見慣れない破片が散らばっていた。どうやら持っていたアイテムが動作したらしく、大した怪我はしていないようだった。しかし、衝撃で目を回してしまったようで、すぐに動けそうにはなかった。
 ニケは自分と同じように駆け寄ってきたレイドを見上げて言う。
「いったん逃げよう。トマ背負って扉まで走れ」
「なんでオレが」
「バカ、オレじゃ背負ったまま走れないんだよ。扉のとこまで言ったら、合図してくれ。それまで、引き付ける」
 そう言うなり、返事も待たずに駆け出した背中に、レイドは舌打ちした。

「!」
 扉まであと少しのところで、持っていた魔力探知機が強い光を放ち、レイドは振り返った。竜の尾が燃えるように赤みを帯びていくのが見えた。
「まずい、火を吐くぞ!」
 その声に、トマはハッと目を覚ますと、彼に下ろしてくれるように頼み、道具袋からある物を取り出す。
「それは……」
「入れた魔力の分だけ瞬間移動出来るアイテムです!あなたの魔力なら、ダンジョンから出ることも出来るはず……ただ、有効範囲が狭くて……勇者さん!」
「早く来い!間に合わない!」
「、っ」
 引きつけた竜の攻撃を避ける。近くにいるだけなのに火傷しそうなほど熱い。じりじりと後退しながら、横目で彼らに目をやる。彼らと扉の距離、そして自分の位置。
(一か八か)
 ニケは道具袋から小瓶を取り出すと頭上へと放り、自分も地面を思い切り蹴って跳躍した。そして、己を睨みつける竜の眼前で、剣を思い切り振り下ろす。ガシャン、と小瓶が割れる音がした。その刹那。轟音が祠に響き渡った。
「――ッ」
 自らが起こした爆風によって、吹き飛ばされた軽い体は硬い床に叩きつけられ、大きく跳ねた後、勢いよくゴロゴロと転がった。部屋に充満する煙の中、伸びてきた腕がその襟を掴んで、グッと引き寄せた。今だ、その声と同時に、竜もまた、全てを焼き尽くす炎を吐いた。間一髪、三人の少年の姿は、部屋から跡形もなく消え失せていた。

「……者さん、勇者さん、大丈夫ですか?」
「いっだだ……おぉ、なんとかなったみたいだな」
 打った箇所が痛むのか、顔を顰めながら返って来た言葉に、トマは苦笑した。あの状況で、三人で脱出するには、多分あの方法しかなかったのだ。この人の直感と、迷いなく実行してしまう判断の速さを、無茶だと怒ることは出来なかった。
「今薬草を……」
「サンキュー」
 しかし、受け取った薬草を半分ほど食べたところで、ニケはいったん手を止めた。
「おいしくないとは思いますけど、ぐぐっと」
「ちょ待って、これ以上食ったら出そう」
「頭、打ちました?」
「それはへーきだけど……なんか胸焼けする」
「……ワープ酔いだな、ほっとけば良くなる」
「回復魔法とかないの?」
「今MPほぼゼロだ。あのアイテムに使ったからな……少しは使えると思ったが、燃費が悪すぎる。並みの魔法使いなら1メートルも移動できないんじゃないか。位置計算にコストかけ過ぎだ」
「うっ、行き詰まったとこ見抜かれてる……」
「そういうの、後にしてくれよ、とりあえず、今日の寝床確保しようぜ」
「動けますか?もし駄目なら」
 背負いますよと言う彼の言葉に、ニケは少し考えてから、小さく首を横に振った。
「大丈夫だよ」

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最終更新日時:
2023年04月17日(月) 01時13分18秒